省エネリフォームは全体でコーディネートしてこそ意味がある。

2015年4月5日

ドイツの建築研究所であるエコセンターNRWの研究員で株式会社日本エネルギー機関
(私、中谷が代表)の取締役である永井宏治氏にドイツの省エネ改修の現状と問題点について解説いただきます。

大手新聞社がKfW銀行(ドイツ復興金融公庫)の発表した、「リフォーム政策の経済性」という調査報告書を誤って解釈して記載し、それがドイツ公共放送でも同様に伝えられてことにより建築業界が激怒し、「ジャーナリズムの責任と影響力について熟慮したうえで執筆すべし。新聞、雑誌が読まれなくなるのは当然。」と痛烈に批判したのは記憶に新しい。こういった問題は度々発生している。

window.png原則的に高性能窓への交換の経済性は低くなっているが、これは単価が高いのと、光熱費削減の割合が小さいことが原因となる。経済性の視点から言うと、年月を経て必要性がでてから交換するほうがいいと言えるが、省エネリフォームは全体でコーディネートしてこそ意味がある。したがってアドバイスする側としては「躯体全体に断熱をして、窓だけは現状のままで」とは言ってはならないという困難なテーマとされる。建築物理学的に見て、これまで内壁、床、天井、開口部全体から熱が出入りしていたものを、開口部だけに集中させるというリスクは、快適性が失われる。また結露をそこに集中させるといった問題から避けるべきであるというのが背景にある。これは全体のリフォームできない所有者はするなということではなく、そういったリスクについての情報を伝える必要があるということである。

新築と省エネリフォームに共通するのは、躯体、設備、再エネという対策の順番だろう。現状からすると、ドイツ国内の設備メーカのロビー活動が強いことと、古くなった設備を効率の良いものに交換する対策

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「省エネリフォーム推進のカギは?」

2015年4月4日

ドイツの建築研究所であるエコセンターNRWの研究員で株式会社日本エネルギー機関 (私、中谷が代表)の取締役である永井宏治氏にドイツの省エネ改修の現状と問題点について解説いただきます。 省エネリフォーム推進のカギは情報 省エネリフォームと言うと、当たり前だが「省エネ効果」にのみ着目されがちだ。確かに最も重要な要素だが、「省エネ」が全ての判断基準であるようにとらえられることが多々ある。これはドイツ連邦政府が目標としている省エネリフォーム率向上を逆に妨げる要因のひとつとなっている。 政府として省エネリフォームを勧める根拠は、ざっとあげるだけでも

◆経済的メリット

冒頭登場した「省エネ」はこの経済メリットのカテゴリーに分類される。現時点でのランニングコストを削減するだけでなく、将来的に上昇するリスクを持つエネルギー価格、すなわち光熱費を小さくすることが目的となる投資の一種と言える。 省エネリフォームによる不動産価値アップも「経済的メリット」の一つだ。建築物への投資額のうち新築が4分の1となり、既存中心社会となったドイツでは省エネリフォームをした、あるいは燃費のいい新築が市場での目玉となってきている。視点を変えると、省エネリフォームされていない建築物は今後もさらに賃貸・売買が困難となるのとも考えられる。賃貸業者の立場からすれば、温熱環境の悪さや光熱費の高さから空家率が上昇し、収入が減少することを防ぐ手段のひとつでもある。

◆建物的メリット

建築物として評価すると、断熱・遮熱対策により快適性のみでなく、躯体にかかる温熱負荷を軽減することや湿害を防止することにより躯体自体の耐久性も増加する。その他、適切な換気設備を導入することによって、建物使用者の対応によっては効率が著しく悪くなる開口部の開閉に頼らず室内の空気を最適な状態に保つことも可能となる。

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