2016年3月28日
エネルギーパスに新機能が追加されました。
その名も「エアコンの効率分析」。
いよいよ新機能について、解説させていただきます。
エアコンを暖冷房機器として使用している実務者は必見の内容です!
前回のおさらい
- APF(COP)は定格出力容量が大きいほど効率が悪い?
- 実際のCOPは外気温と負荷率で決まる。
- エアコンの容量選定は、断熱、気密と間取りを考慮しながら、最適な容量選定を設計者が行う必要がある!
という話でした。
エアコンの最適容量(COP)分析 — エネルギーパスの新機能 その1
とはいえ、刻一刻と変動する外気温と暖房負荷率を計算するなんて、専門の研究機関でないとできないのでは?と思いますよね。
だからみなさんやむなくザックリ0.7掛けとかで納得するしか道はありませんでした。
ザックリ補正では納得できなかったので、詳細検証ツール作りました。
Q値計算をしっかりと行い、詳細なまでに面積計算をせっかく行っているのだから、エアコンの効率計算もしっかりと計算したい!
ということで、エネルギーパスの計算過程で補正COPが取得できるので、グラフ化をできるようにバージョンアップしてみました。
(エネルギーパスのエアコン設備効率の計算はH25年改正省エネ法第三節ルームエアコンディショナーの計算式を使用しています。)
エアコン効率分析ツール
1枚目上段のグラフの読み方は、縦軸が負荷率で、横軸が時間、1枚目下のグラフの読み方は、縦軸がCOPで、横軸が時間です。

では、まずは負荷分布図から。

日中陽が出てきて外気温も上昇し、暖房負荷が極端に少なくなった時(いわゆる低負荷運転時)にCOPが大きく低下しているため、連続暖房の場合はエアコンの容量がやや大きすぎる可能性が見て取れます。
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2016年3月26日
エネルギーパスに新機能が追加されました。
その名も「エアコンの効率分析」。
新機能について、解説させていただきます。
私の知る限り、エアコンの効率分析を行える機能を持つ燃費計算ツールは、現時点ではエネルギーパスだけだと思いますので、非常に使えるツールと考えております。(というのも私が実務でエアコンの容量選定用に使っていたエネルギーパスの裏プログラムなので。)
釈迦に説法ではありますが、まずはエアコンのうんちくから。
エアコンは日本では最も売れている白物家電
ご存じのとおり、エアコンは大変効率の高い暖冷房機器であり、
今や1世帯当たり約3台、まさに日本では最も売れている白物家電です。

エアコンの最大の売りは一台で「暖房と冷房」ができること、そして「省エネ性能」が極めて高いこと。
ヒートポンプ方式で、
1の電力 + 6の大気熱 = 7の暖房熱エネルギー
というように電気エネルギーを何倍にも増幅して暖冷房熱を効率的に生み出すことができます。
まるで魔法のような超便利家電につき、毎年なんと800~900万台も売れています。

エアコンの課題、それは実効率が不明な点
最強の白物家電のエアコンにも、省エネルギーの観点では一つだけ大きな課題があります。
それは、ヒートポンプは外気の大気熱を集めて利用する性質上、効率が外気温に大きく左右されることです。
一般的にエネルギー効率を表す数値として使用されている数値として「COP」があります。
COPとは、暖房は7度、冷房は35度といった温度条件で負荷率100%運転した場合の1点の性能のため、季節に応じたエアコンの運転状況は加味されていません。
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2016年1月24日
国土交通省にて住生活基本計画(全国計画)の見直しについて審議を行うため、社会資本整備審議会住宅宅地分科会が2016年1月22日に開催されました。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s202_jutakutakuchi01.html
釈迦に説法かと思いますが、この住生活基本法というのは、5年ごとに見直される、日本の住宅政策の方向性をきめる最重要な審議会。
前回見直されたのが5年前の2011年ですので、今年が見直しの年となっています。
前回の2011年の見直しでは、省エネ省CO2関係が劇的に強化され、例えば以下のような具体的な政策イメージが掲載されていました。
- 新築住宅の省エネ基準への適合義務化や誘導水準の導入、既存住宅の省エネリフォームに対する支援等を行う。
- 住宅の省エネルギー性能等の「見える化」の促進、低炭素社会に向けた住まいと住まい方に関する啓発・広報等を行う。
- 住宅及び住宅市街地の総合的な環境性能を評価する仕組みの普及や住宅のライフサイクルを通じたCO2排出量の低減、再生建材の利用の促進や住宅の建設・解体等により生じる廃棄物の削減及び適正処理を図る。
- 森林吸収源対策として、間伐材を含む地域材を活用した住宅生産技術の開発及び普及の促進等により、住宅の新築及びリフォームの際の地域材利用を促進する。
この5年間の間に具体的に法整備がなされたものばかりですね。
この住生活基本法を押さえておけば、今後の住宅政策の流れにしっかりと乗っていくことが出来ますので、良く読み込むことをお勧めします。
今回注目の目標
省エネ関係以外は多くの方がコメントされていますので、私は省エネ関係だけほじくってみたいと思います。
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2015年10月1日
■冬の予想平均室温について
エネルギーパスの冬の予想平均室温についての質問を頂きましたので、
ついでに計算内容について記載します。

冬の予想平均室温では、12月〜3月までの平均室温を計算しています。
- 無暖房=暖房を付けない場合の期間平均室温
- 間欠暖房=間欠暖房で発生させる熱量を追加した場合の期間平均室温
(なお、記載はありませんが、全館暖房の場合は期間平均室温は20℃となります。)
無暖房の平均室温は断熱性能と外気温、内部発生熱、日射取得熱、熱容量によって変動します。
間欠の場合はそこに間欠暖房による発生熱を足します。
■暖房負荷の計算
- 月暖房負荷(kWh) =(想定室温-月平均外気温)* 熱損失 * 24時間 * 月日数 – 利用効率 * (内部発生熱+日射取得熱)
となります。なので月暖房負荷から逆算して、
- 無暖房時の平均室温 = 想定室温 - (月暖房負荷*1,000 / 熱損失 / 24時間 / 月日数)
となります。
無暖房時の平均室温を上げるには、
Q値(熱損失/床面積)を下げるだけではダメで、日射取得熱を増やさなければなりません。
また、Q値が低い場合は熱容量が軽いと日射取得熱を効率的に利用できなくなる為、
日射取得熱を増やすと同時に熱容量も高める必要があります。
■おまけ
>>暖房時の室温がQ値1.0程度の外皮でも約11℃と低かった。
>>平成25年基準では早朝トイレの室温が10℃以上と聞いたのですが・・・
これは、冬期の日射取得熱量が少ない(かつ熱容量が少ない)ためです。
例えばH25年基準で想定している日射取得熱量は月大体1,000〜1,200kWh程度を見込んでいます。
当該物件はグラフ6(2ページ目)の冬期に日射取得熱量がかなり低いのではないかと考えられます。
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2015年7月5日
住宅における冷房潜熱負荷の計算方法
インターネット上において暖房負荷計算についての記述は多少見かけるものの、冷房負荷、事に潜熱負荷に関する計算方法を解説しているページはあまり見かけません。
そこで、冷房潜熱負荷の計算方法を住宅のエネルギー計算に興味がある方用に、参考のために記載いたします。

上記のとおり冷房における潜熱負荷が発生するのは、外気絶対湿度(Xe)と内部発生湿度(DAQin)を足した絶対湿度が、Xi(室内設定絶対湿度)を上回った場合に発生します。これを1時間ごとに計算して積み上げることで月間の冷房潜熱負荷が計算できます。
冷房潜熱負荷を小さくしていくためには、室内絶対湿度(Xi)の湿度を上げる、又は換気量(V)を少なくすることになります。前者は我慢できる湿度はどのぐらいかという対応になるので一般的な建築の提案とは異なりますので、換気量を以下に抑えるかを考える事が建築的な対応と言えます。なお、エネルギーパスでは基本的に室内設定は27℃(任意で変更可能)相対湿度60%における絶対湿度13.43g/kgよりも絶対湿度が高くなった場合に冷房潜熱負荷として計算しています。
●絶対湿度
絶対湿度は重量絶対湿度(g/kg)と容積絶対湿度(g/m3)があります。一般的にはエネルギー計算をする場合の絶対湿度はg/kg又はkg/kgを使います。しかし換気の計算を行う場合は換気量(m3)で計算していくことが多いために間に空気の密度(kg/m3)を噛ませることで単位変換を行う必要があります。ざっくり計算する場合には0.83をかければg/m3はg/kgに、反対に0.83で割ればg/kgはg/m3になります。(空気の密度を20℃で計算すると1.205kg/m3となるため)
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2015年6月16日
日本エネルギーパス協会が何をやっている団体なのか?
今日は、日本エネルギーパス協会が何をやっている団体なのかについて、少し解説させていただきます。
ザックリといえば私共は「家の燃費」つまり光熱費を見える化していくということを推奨している団体です。 具体的にはみなさまに、燃費計算を設計段階で行っていただく為の「勉強の場」と「燃費計算ソフトウェア」などを提供させていただいております。
「この○○の家を□□で建てた場合には、一般的な生活を送った場合に、電気代とガス代が一年間で約25万円いくらぐらいかかりますね。」
というような燃費計算結果を、設計段階でお客様にアウトプットしながら住宅を提供する営業活動を推奨、サポートしています。
こういった「家の燃費」を建てる前の段階でお客様に提示していくと、例えば新商品の高性能樹脂窓があったとして、今標準仕様で提供しているアルミサッシからアップグレードした場合(U値4.65→0.8)年間の光熱費がどのぐらい下がるのか?導入予定の暖房の設備効率を考慮して予想される燃費をはじき出します。
例えば光熱費が3万円下がったとします。一方アップグレードに必要な差額は60万円だったとします。60÷3=20年で元が取れる計算になりますね。20年で元が取れるなら、30年以上住むのでこの窓は買いだ!ということをお施主様が判断できるようにサポートしていく営業方法です。
光熱費をチマチマと計算して一体何のメリットがあるのか?
私どもは概要としてはそういうことをやっていますが、正直、光熱費をチマチマと計算したりするの面倒くさいし、そのようなことをして一体何のメリットがあるのか?というところをお考えの方が圧倒的に多いのではないでしょうか?
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2015年5月27日
スイスバーゼル都市州のエネルギー公社、いわゆるシュタットヴェルケで長年にわたり省エネとエネルギー高効率化のチームを率いていたルーフ局長に来日いただきました。なんと有難いことにルーフさんが定年までに溜め込んだ膨大なノウハウを、一週間の缶詰め講習とロールプレイングで移植していただきます。今後の日本に必要なノウハウが詰まっていますので、しっかりとノウハウを受け継ぎ、日本版の省エネ改修プログラムを頑張って組みます!!


概要をザックリといえば、エネルギーパスによる詳細調査前の省エネリフォームの初期診断みたいなものです。そして大本命のエネルギーパスを駆使してのインテンシブな省エネリフォームコンサルティングスキーム。ちなみにスイスではエネルギーパスはゲアクといいます。

エネルギーエンジニア資格保有者にはそのうち新しい研修会をご提供できると思いますので、こうご期待です。(レベル的には新築のエネルギーパスがしっかりと使えるようになった方限定にはなります)

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2015年4月6日
◆メイドインジャパンは高性能?
日本とドイツの窓を比較するとその差に非常に驚かされます。 一般的にメイドインジャパンといえば高性能の代名詞のはずなのですが、窓の断熱性能に限っては様子が違います。 現在ドイツで販売されている窓の断熱性能には最低基準があり、U値1.3以下のものでなければ人が住む所には取り付けることができません。(U値とは小さいほど断熱性能が高く高性能であるという意味) 一般的な住宅で使用されているサッシのU値は1.0以下が当たり前。
一方日本の窓には、断熱性能に関して最低基準がありません。 そのため大半の新築住宅で現在使用されている窓のU値は4.65(アルミサッシペアガラス6㎜)であり、およそドイツの4~5分の1しか断熱性能がない低断熱な窓が使用されています。 ちなみに、未だに金属製のフレームの窓をメインに使っている国は、冬に暖房を使う地域では日本だけでは無いかと思います。 金属製のフレームの窓は防火や耐久性の観点では優位性があるが、断熱性能においては不利であり、世界的に住宅の省エネルギー性能が重要視されるようになった昨今では、日本以外ではよほどの事情がない限り使用される事がなくなっています。
◆なぜ日本とドイツでこれほど断熱性に差が?
それは、冬は寒いから「断熱をして熱を大切に使う」という思考を持つドイツと、冬もそんなに寒くないから寒かったら服を着ればいいじゃないかという日本との価値観の違いと言えるのではないでしょうか。 とはいえ、日本でも徐々に生活が欧米化しており冬には暖房を焚いて快適な室内空間を確保しようという流れが加速しており、住宅内のエネルギー消費量が右肩上がりに上昇しているため、今後は欧米に習って、断熱性能の高い家づくりが必要とされています。
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2015年4月6日
◆成熟化した社会構造に適合したドイツの住宅産業
日本では新築中心の高度経済成長モデルを未だに続けており、新規建設投資額に対して新築は62%(約13.8兆円)リフォームはわずか8.4兆円、しかもこの大半が住宅ではなく、ビルなどの非住宅。こと住宅においては新築一辺倒であり、リフォームでの再投資が、ほとんどなされていないというのが如実に表れています。一方ドイツの場合、全体の約76%がリフォーム。新築投資というのはわずか24%(568億ユーロ)しありません。そして注目すべきは省エネリフォームが全体の26%(613億ユーロ)、日本円にすると約8兆円もあるということです。しかもこの省エネリフォームという市場は、ここ最近意図的に政府によって作り出されたものです。 どうしてこれだけの市場を作り出すことができたのか?それは「家の燃費」という概念がポイントとなっているのです。
◆省エネリフォームは光熱費の単年度建設投資
簡単に言うと、省エネリフォームというのは海外に流出していた20年分の光熱費を、ギュッと圧縮し、単年度の建設投資に変えるスキームといえます。例えば、日本の場合毎年20兆以上の化石燃料を海外から購入しています。このごく一部でも省エネリフォームに投資することができれば、例えばほんの1%2000億円を省エネ住宅に投資させることが出来れば、「1000億×20年=4兆円」の市場が作り出せます。この省エネリフォームへの投資を誘引していくという政策は、これ以上環境政策として、そして経済政策として優れたものはないと言われている大ヒット政策です。ですから、リーマンショック後にドイツ連邦政府が最初に打ち出した緊急経済対策は断熱リフォーム補助金の積み増しでした。また、住宅所有者にとっては、省エネ住宅というのは投資です。昨今のエネルギーコスト上昇の影響で、「家の燃費」を計算してみると、低金利で銀行に預けているよりも、省エネ住宅に投資した方が、圧倒的に利回りが高いのです。省エネ住宅政策とは、地域で眠らせていた個人預金を地域経済活性化に活用するすぐれたシステムなのです。
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2015年4月6日
◆国土の長期展望
2011年2月に「国土の長期展望」という国土交通省が示した非常に優れた資料があります。 ご興味のある方は是非チェックしてみてください。以下のURLよりダウンロード可能です。
「国土の長期展望」中間とりまとめ
「国土の長期展望」によると日本の総人口というのは、2050年には約9,500万人と、現在から3,000万人以上大幅に減少してしまうとさています。しかも、これはもうすでにほぼ確定しており、もし人口減少に対して対抗するのであれば、1980年代位から少子化対策をしっかり取り組んでおかなければなりませんでした。世帯数に関して核家族化が進んでいるとは言え、2015年から2020年頃から減少していくということが予想されています。 今までの日本は、新築中心の高度経済成長モデル。 高度経済成長期に日本中で住宅や道路、橋などを作り続けてきました。この今まで作ったインフラは老朽化してきますので、維持するためにはリフォームしなくてはなりません。ところが、この維持コストだけでも2030年以降は、今まで新築+維持にかけてきた予算以上にコストがかかってくるようになり、全部は維持することができなくなります。つまりこれから行われる事は、どの地域を残し、どの地域を捨てるか、を決めなくてはならないタイミングに差し掛かっています。
◆新築中心の高度経済成長モデル依存で増え続ける空き家
日本の住宅産業は未だに新築中心の高度経済成長モデルから脱することができず、減ったとは言え、毎年約80万戸以上の住宅を新築しております。高度経済成長モデルで新築住宅を続けてきた結果として、作りすぎた住宅がどんどん余って溜まり続けています。今現在では5,000万世帯数に対してストックが5,700万戸以上、約800万戸近くの住宅が空き家になっています。住宅が余っているのに作り続けている状態というのは、前回のコラムでもお伝えした通り、ワルラス的調整状態であり、地域の資産価値は下落し続けることになります。
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