日本エネルギーパス協会

家の燃費を見える化してますか?

エネルギーパス計算ソフトについて

●エネルギーパス計算ソフトについて

「エネルギーパス®」とは、建物の燃費を評価するものさし。車では「JC08モード」があり、家電には「省エネラベル」がありますが、あれらの建物版とお考えください。もし自動車会社が各社それぞれ違った条件や方法で違った燃費を表示していたとしたら、どの車が低燃費なのか分からずに、購入するときに判断出来ずに困ってしまいます。

ところが、車の10倍以上高額な「家の燃費」が明示されていませんでした。今思えば、これ以上不思議な事は無いのではないでしょうか。実は、日本以外の主要先進国では、「建物の燃費評価手法」として「エネルギーパス®」という「家の燃費のものさし」があります。数年前からEU27カ国では家の燃費を明示する事が義務化されており、誰でも家を買うときや借りるときに家の燃費を知る事ができるようになっています。そこで、日本でも「家の燃費」を明らかにする為に「エネルギーパス®」による「家の燃費表示」が始まりました。

「エネルギーパス®」では、建物の断熱・気密・蓄熱性能を評価し、換気、給湯、照明を合わせ、対象の建物で一年間生活した場合の「電気」や「ガス」「灯油」などで使用されるエネルギーの量を「〇〇kWh/m2・a」と、定量的に把握することができます。

●簡単に、今お施主様に求められている省エネルギー性能の知識が付く

東日本大震災による原発事故を受けてエネルギー問題への注目度が飛躍的に高まりました。お施主様の読む住宅雑誌でも、Q値(熱損失係数)、U値(熱貫流率)、C値(相当隙間面積)などの説明が増えており、元請け業者として様々な質問にも答えられるように十分な温熱性能に対する専門知識が求められています。

「エネルギーパス®」では、年間で消費エネルギーがどの位になるかを評価できるため、評価の過程にて断熱性能などの勘所や費用対効果を理解することができます。「熱損失量割合グラフ」や、「日射コントロール」「参考光熱費」などの住宅の温熱性能に関わる計算機能がありますので、家の省エネルギー化に必要な知識や経験、ノウハウを得るためには効果的です。

●専門知識がなくても燃費の評価が可能

今までは、住宅のパッシブデザイン設計を行う上で燃費計算を邸別に計算できるソフトは、学術研究用のいわゆる専門家専用のものしか有りませんでした。そのため、基礎知識として専門的な熱損失係数や省エネ基準などの基準書を十分に理解する必要があり、一般的な住宅で邸別に評価する事は敷居が高いと考えられていました。
環境先進国ドイツでは、一般的な住宅でも簡単に燃費評価ができるシステムとして「エネルギーパス®」が開発され、今ではISO国際規格となっています。
「エネルギーパス®」は、入力をできるだけ簡単にするために、必要最小限の入力になるよう工夫されています。そのため、省エネ建築の専門的知識をあまり持たずとも、「家の燃費」を評価する為の「世界標準の評価手法」です。fotolia_58413838_xs

●簡易な入力で最先端のパッシブデザイン設計が出来る。

燃費計算のベースとなる「熱損失量」や「日射取得量」などの計算は、各部位ごとに使用する係数や計算方法が異なったり、同じ部位でも断熱方法などにより計算方法が異なったりするために、手計算では計算ミスが発生しやすくなります。また、「日射取得量」の場合、サッシの日射遮蔽や庇などを一つ一つ計算していく為に、計算量も多くなり複雑になります。そのため手計算では計算量が多くなれば、比例して単純な計算ミスが増加していきます。

「エネルギーパス®」では、入力に間違いがなければ、ソフトが自動計算しますので、詳細な計算方法を把握する必要がなく、計算ミスも低減出来ます。今まで一部の専門家しかできないとされていたパッシブデザイン設計を容易実現させる事ができるようになります。fotolia_55259497_xs

●平成25年改正省エネ法との入力の一元化を実現(ついでに出来ちゃう)

エネルギーパスを作成すると、同時に平成25年改正省エネ法に基づく一次エネルギー計算用のファイルが作成されます。エネルギーパスの作成工程で、建築研究所のWEBプログラムにアップロードするXMLファイルが作成されますので、国の一次エネルギー計算も一緒に作成できます。housemark

実はエネルギーパスと改正省エネ法は重なる作業工程が多く(9割以上が重複しており、あとちょっとでエネルギーパスによる燃費計算が出来るほど多くの情報を必要としています。)そこまで入力して、一次エネルギー評価のみで終わらせてしまうのは、あまりにもったいなすぎます。建築研究所のWeb一次エネルギー計算を行っている方には、税制優遇や性能表示制度等の申請にはWebプログラムを、お客様への燃費説明などの営業ツールとしてエネルギーパスを使っていただくことを強くお勧めいたします。

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●間欠空調の燃費計算が出来る

h25kaisei時間全館空調が基本のヨーロッパなどと異なり、現状では日本においては現状では大半の住宅が間欠空調を採用しています。そのため間欠空調の評価の出来ない燃費計算ツールでは、光熱費計算が実際と大きくずれるために、意味をなさないという課題がありました。
そこで、エネルギーパスではISO13790の間欠空調負荷計算ロジック、及び平成25年改正省エネ法の設備効率計算ロジックを採用することで、間欠空調にも対応することで、現在の日本の住宅環境に適合した燃費計算をすることが出来ます。

※ほぼ冷暖房を必要としないパッシブハウスレベルの超々高性能住宅では、そもそも全館でも間欠でもエネルギー消費量があまり変わらない為、空調方式の違いは殆ど問題になりません。

 

●使用基準では正しい省エネ住宅は作れない。

96bc8fcc96a290dd92e8-1これまではパッシブデザイン設計をする為には、適切な判断を下す為には膨大な経験と知識が必要であり、一部の専門家の独壇場となっていました。(パッシブデザイン設計が難しいとされていた原因)そのため、一般的には仕様基準にて省エネ性能を判断している場合が多く見受けられますところが仕様基準では、部材の性能を一段階上げる事で、どのくらい光熱費が下がるのかが不明で、本来の住宅の省エネ性を判断することはできません。
例えば、仕様基準では面積を考慮していない為に、極端にサッシ面積が大きい住宅でも基準をクリアすることができます。ところが、このような住宅では、いくら断熱材を厚くしても、夏はサッシから日射が入って蒸し暑くなり、冬はサッシからの熱損失が大きく寒さに凍える住宅になる可能性が高くなります。邸別に条件の違う実建築では、仕様基準では十分な省エネ効果が期待できません。

そこで、「エネルギーパス®」を断熱仕様やサッシ仕様や位置などを、邸別に検討するための設計ツールとして使用することで、より的確な省エネ性を実現することが可能になります。

●単純に北欧のようにQ値を追求するだけでは、日本では効果は限定的?

冬は乾燥して寒く、夏は高温多湿な亜熱帯地域である日本では、北欧のようにQ値を単純に高めていくだけでは、逆高価な場合が有ります。Q値とは熱損失であり、保温性と置き換えて考えると分かり易いかもしれません。保温性が高いと、冬には室内を暖めるとしばらく暖かいままとなる為に高い効果を発揮します。ところが、夏の場合は、保温性が高いという事は夏の暑さも保温してしまうという事。日射による熱を取り込まないように日射コントロールを適切に行っていないと、夏に蒸し暑い家(オーバーヒートする家)になってしまいます。高気密高断熱な家に、「冬暖かく夏暑い家」が多いのは、冷房負荷と暖房負荷を連動して評価していなかったからです。

「エネルギーパス®」では、冬の暖房負荷と夏の冷房負荷を連動して評価している為、断熱性能を高めると同時に日射コントロールが必要となる事が数値で簡単に把握できます。

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●省エネ建築をよりローコストで実現

同じ事を手計算で行う場合、膨大な知識と経験を必要とします。また、計算に時間がかかるため、一度計算してしまうと、条件を変えての再計算は非常に大変です。

「エネルギーパス®」は、入力条件を変えて計算を繰り返してもほとんど時間がかかりません。断熱材の適正な厚みはどの位か、サッシの性能はどの辺りが費用対効果に優れているのか、また、サッシの取り付け位置や高さなどを変える事で、設計段階で省エネ性能を判断する事ができる為に、検討コストや建築コストをかけずに省エネ性能を向上させる事も可能になります。実際に、建物の配置角度、隣家との距離、南面の窓の大きさ、庇の長さといった予算とはあまり関係ない項目を適切に計画するだけでも燃費は大きく変動します。

「エネルギーパス®」では、手計算では難しい庇の効果を判定できる為に、庇は夏の日射を遮り、冬の日射を取り入れることができます。高い省エネ性能を実現させる為には、日射制御には非常に効率的です。一つ一つのサッシに庇をつけるとどの位燃費が下がるのかを、具体的に数値で検討できますので、住宅に効率的に庇を取り付けることで、より効果的な省エネ性をローコストで実現することができます。

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●躯体だけではなく、設備設計も重要

断熱気密と設備は合わせて省エネ性能を最大化する能力が欠かせません。最近では断熱や気密を熱心に取り組む工務店も増えています。ところが、そういった工務店は案外と設備設計に関してはあまり気に留めていない事が多いと感じております。せっかく器である躯体の設計をしっかりと行っても、暖房や冷房を全く不必要にするのは困難です。つまり、家の燃費を考えるうえで、暖冷房設備設計能力も欠かすことが出来ません。

実は高いCOP(エネルギー効率)を誇るルームエアコンは、無断熱南向きの木造住宅を想定して設計されています。例えば、6畳用のルームエアコンは無断熱の6帖間を冷暖房するのに最適化されており、最近の高い躯体性能を誇る住宅においては、オーバースペックとなります。特にエアコンなどのヒートポンプ高効率設備機器は、定格能力、つまり想定された環境で最大のパフォーマンスを発揮する様に開発されているため、オーバースペックな状態で使用すると、想定されているCOP(エネルギー効率)よりも大幅に効率が悪化します。
家の燃費を最適に押し下げていくためにも、設計した躯体能力に合う設備機器類を選定する能力が、これからは求められてきます。
エネルギーパスでは、エアコンはもちろん、給湯器などの設備機器の選定を最適化するために、最新である平成25年改正省エネ法の設備計算手法を採用しています。例えば、ルームエアコンであれば、設備能力に対する一時間当たりの熱負荷(負荷率)および外気温、湿度などの環境設定に応じた予測COPを一時間ごとに該当地域の状得件をあてはめて消費エネルギーの計算を行っているため、より詳細な設備機器の最適化を検証することが出来ます。

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●他社との差別化につながる

近年は、住宅着工件数の大幅な減少により、住宅産業全体が非常に厳しい時代です。このような時代には、他社との差別化のために、自社の優位性を積極的にアピールする必要が有ります。
「家の燃費」の評価は、住宅の省エネ性や快適性を数値で明確にアピールすることができるため施主に非常荷受けが良いです。例えば、ライバル会社の家と自社の家では年間の光熱費の差が〇〇万円あり、居住快適性が〇倍違う等と、他社との差別化を容易にアピールすることができます。
Q値やC値での差別化よりも「想定光熱費が年間〇〇万円」というアピールは、お施主様へのインパクトが数段違ってきます。

「エネルギーパス®」では、「家の燃費」を客観的に評価する事ができるため、高性能な家づくりを心がけている設計事務所や工務店では、自社商品のアピールなには高い効果を発揮する事ができます。

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●ハイクラスのお施主様と相性が良い

建築コストだけを重視するお施主様には、薄利多売が可能な大手メーカーやローコストFCグループが優位になりますが、住宅の性能や快適性などを重要視なさるお施主様は、年間着工数が少ない小規模工務店でも十分対抗することが可能です。
住宅の性能を重要視なさるお施主様は、高額な建築予算を持っている事が多く、ご自分たちでかなり勉強をされています。それだけに元請け側にも家の性能に関する知識が要求されます。このようなお施主様は、住宅性能や居住快適性に詳しい工務店を捜していますので、「エネルギーパス®」で家の燃費性能を明示できる設計事務所や工務店との相性はかなり良いと言えます。

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※1 10kW時の電気エネルギーは概算でおよそ1Lの灯油エネルギーと同等。30kW時/m2の燃費の建物は3L/m2とおよそ同等。このレベルの燃費性能の家のことを、3リッターハウス、あるいは30kW時ハウスなどと呼びます。

※2 国交省と経済産業省では、告示で、建物の燃費計算の際は、一年間を通じて室内温度を18度~27度に保つことを想定しています。

※3 COP3=最近のエアコンでは1の電気で3の空調エネルギーを造り出すことが出来ます。4,000kW時÷3→1,250kW時のエアコン用電気が必要とみなし、電気代30円で計算。

 

 

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