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必要エネルギーと省エネ基準の外皮性能の値、なぜ評価結果が違うのか??

エネルギーパスの必要エネルギーと省エネ基準の建物性能との違いについて解説したいと思います。

エネルギーパスで入力した結果、必要エネルギーは次世代省エネ基準の必要エネルギーよりも良い数値にも関わらず、省エネ基準のUA値とηA値は基準を下回る数値になってしまうことがあります。

必要エネルギーと外皮の性能値の違い

それは何が関係することでそういった違いが生まれるのでしょうか。
その原因を必要エネルギーの計算式の中から見てみたいと思います。

下の式はエネルギーパスの必要エネルギーを求めるのに用いる計算式です。

暖房期の必要エネルギー QH=QT+QV-η(Qsol+Qi)
冷房期の必要エネルギー QC=Qsol+Qi-η(QT+QV)

※QT=外皮性能、Qv=換気・気密性、Qsol=太陽からの熱取得、Qi=内部発生熱

この暖房・冷房期2つの必要エネルギーを足したものが年間の必要エネルギーになります。
この式中のQTに当たるところが建物外皮からの熱損失であり、省エネ基準のUA値と同じ意味合いのものになります。(単純にイコールではありません)
また、Qsolが太陽からの日射取得熱を評価した値であり、省エネ基準のηA値と対照となるものです。
ただし、ηA値は冷房期についてのみの値であり周辺建物などによる日射遮蔽は考慮されないため、Qsolを求めるための途中経過といえます。
このことから、外皮性能を示すUA値とηA値は必要エネルギーを求めるための評価項目の一部分であることが分かってきます。

ではエネルギーパスの入力において、UA値とηA値を求めるのに必要な情報以外で必要エネルギーを求めるために入力する情報は何かというと下記に挙げる情報になります。

○太陽からの熱取得に関する項目
・隣接物との関係(離隔距離・高さ)
・受日射面の色調(明度)
・窓の設置位置(高さ)
・開口部に対しての袖壁

○ 換気・気密性に関する項目
・周辺の風除環境
・隙間相当面積 C値
・通風計画
・換気

○内部発生熱に関する項目
・蓄熱容量

このように、エネルギーパスの入力では外皮性能評価には含まれていない要素・建物周囲の環境からの影響を評価するものが多いことが分かります。
これにより内部空間がどのような温熱環境になるのかを考慮することが出来るようになります。
パッシブ設計を行う上ではごくごく当たり前とされる内容ですが、省エネ基準での環境評価は日本を8つの温熱の地域に区分したものだけです。
これですと隣接建物によって暖房期に日射を得られないケースも、樹木によって冷房期に日射を遮れるケースも、周囲に何もない草原に建てることと同じに扱われるということになります。

ここはやはりきちんとその土地の性質を評価に反映して頂き、その土地に合った設計をして頂くことが人にも建物にとっても大切なことではないでしょうか。

最後に、必要エネルギーと外皮性能UA値・ηA値を比較するとUA値・ηA値は外皮という「モノを評価したもの」で、必要エネルギーはこの外皮とそれを取り巻く外部環境に包まれた「空間を評価したもの」と言えるかと思います。

それぞれの値の意味・性質を理解し、より良い住宅のアイデアに活かして下さい。

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