市民タイムス(長野県)連載・第7回 住まいとクルマの新しい関係 ″V2H″

2015年5月18日

2015年5月13日
【住まいとクルマの新しい関係 “V2H”】

今年4月から長野県では、新築戸建て住宅も「建築物環境エネルギー性能検討制度」と「自然エネルギー導入検討制度」の義務対象になった。住宅で「自然エネルギー導入検討制度」に基づき最も導入が検討される自然エネルギーは、太陽光発電ではないだろうか?

太陽光は、福島第一原子力発電所の事故以降、導入が急速に進んでいる。しかしながら、電力会社の再生可能エネルギーの受け入れ能力不足により、九州電力など5つの電力会社が「固定価格買い取り制度」の受付を一時保留にするなど、太陽光発電の普及は曲がり角に来ている。

そこで最近注目を集めているのが、「V2H」と呼ばれる仕組みだ。これは、ビークル・ツー・ホームの略で、住宅と電気自動車(EV)の間で相互給電するものだ。つまり、EVに貯めたエネルギーを家庭用電力として利用できるシステムのことをいう。

EVの仕組み_第7回

V2Hに対応した住宅に力を入れているセキスイハイム信越株式会社 中南信支店の石原範久氏によると、V2Hにより、EVへの充電は電力会社から購入するのではなく太陽光発電による電力を中心にすることで、100%クリーンエネルギーによる走行が可能になるという。つまり家の中の消費エネルギーを削減するだけでなく、移動時の化石燃料の消費も削減できるのだ。これは、公共交通機関の使用頻度が低く、自家用車依存度の高い長野県においては、とても意味のあることだろう。また県内のガソリンスタンドの店舗数が減りつつあり不便を感じている方々にとってもメリットがあるのではないだろうか?

さらに割安な深夜電力をEVに貯めて、昼間に使用することができるので、電力会社から購入する電気料金の単価も抑えられる。それに加えて、停電時にはEVの電力を活用して、普通に生活が送れるという。それも2日以上停電が続いても太陽光による電力をEVに貯めて使用できるので、大規模災害時もとても安心なのだという。

固定価格買い取り制度の買い取り価格が下がり続けており、今後の先行きも見通せない状況にあり、電力会社の買い取り制度に依存した太陽光発電の仕組みは見直していく必要がある。そうした中で、EVと連携したV2Hは、家で使用する光熱費の削減だけでなく、自家用車の維持コストも大幅に削減可能で、さらに災害時の安心も確保できるなどメリットが大きい。自然エネルギーの導入を検討するならば、思い切ってV2Hの導入まで検討してみてはいかがだろうか?

次回は、断熱性能と併せて確保したい気密性能について考えてみたい。

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