日本エネルギーパス協会

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◆メイドインジャパンは高性能?

日本とドイツの窓を比較するとその差に非常に驚かされます。 一般的にメイドインジャパンといえば高性能の代名詞のはずなのですが、窓の断熱性能に限っては様子が違います。 現在ドイツで販売されている窓の断熱性能には最低基準があり、U値1.3以下のものでなければ人が住む所には取り付けることができません。(U値とは小さいほど断熱性能が高く高性能であるという意味) 一般的な住宅で使用されているサッシのU値は1.0以下が当たり前。

一方日本の窓には、断熱性能に関して最低基準がありません。 そのため大半の新築住宅で現在使用されている窓のU値は4.65(アルミサッシペアガラス6㎜)であり、およそドイツの4~5分の1しか断熱性能がない低断熱な窓が使用されています。 ちなみに、未だに金属製のフレームの窓をメインに使っている国は、冬に暖房を使う地域では日本だけでは無いかと思います。 金属製のフレームの窓は防火や耐久性の観点では優位性があるが、断熱性能においては不利であり、世界的に住宅の省エネルギー性能が重要視されるようになった昨今では、日本以外ではよほどの事情がない限り使用される事がなくなっています。

 

◆なぜ日本とドイツでこれほど断熱性に差が?

それは、冬は寒いから「断熱をして熱を大切に使う」という思考を持つドイツと、冬もそんなに寒くないから寒かったら服を着ればいいじゃないかという日本との価値観の違いと言えるのではないでしょうか。 とはいえ、日本でも徐々に生活が欧米化しており冬には暖房を焚いて快適な室内空間を確保しようという流れが加速しており、住宅内のエネルギー消費量が右肩上がりに上昇しているため、今後は欧米に習って、断熱性能の高い家づくりが必要とされています。
ではまずはどこから手を付けたらよいか?それは、住宅において最も熱の出入りが多い箇所である窓なのです。例えば冬に家から逃げていく熱の約半分が窓からなのです。また、夏に家に入ってくる熱の7割以上がこれまた窓からです。つまり、もし日本でも熱を大切に使おうと考えた場合、第一に検討すべきは窓の性能向上になります。それほど重要な窓の断熱性能が世界で最も低いため、日本の住宅は夏暑く冬寒い…。どう考えても「熱を大切に使おう」という思想が欠けていると言わざるを得ません

 

◆断熱性能の低い住宅におこる健康問題

話は少し飛びますが、住宅の断熱性能が低いとどのような問題が起こるのか? 実は、住宅の断熱性能が低いと、室温が低いために命の危険が高まります。特に冬になると増えるのが、循環器系や呼吸器系の疾患、そして家庭内における不慮の事故などです。 例えば2012年、1年間で4,200人もの方が浴室で溺死されておりますが、その大半が冬に集中しています。寒ければ服を着ればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、お風呂に入るときは服を着ることができませんし、肺には服を着せることすらできないため、不慮の事故や呼吸器系の疾患は、住宅の室温を上げないとなかなか改善することは難しいのです。
また、近畿大学の岩前篤教授の研究では、住宅の断熱性能と健康の関係が指摘されています。「冷えは万病のもと」という言葉をご存知の方も多いと思いますが、なぜか住宅の室温に気を遣う方が少ない日本。 健康と住宅の断熱性能の関係は、冷静に考えるとごく当たり前のことなのだと思います。

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では、健康で快適な生活を手に入れるためにはどうすれば良いのか? それは住宅が、冬には高い断熱性能、夏には暑い太陽の日差しを遮る日射遮蔽性能を持つ必要があります。この断熱性と日射遮蔽性の向上に最も効果的な対策が窓の性能向上にあります。 例えば、断熱性能向上と日射遮蔽を両立するには、LOW-Eガラスが効果的。ドイツではリフォームの際に交換されるすべての窓ガラスがLOW-Eガラスになっています。 日本でも、窓ガラスをLOW-Eガラスに交換したり、内窓を取り付けたりすることで、夏涼しく冬暖かい住まいを比較的簡単に手に入れることができます。 新築するのであれば、必ず次世代省エネルギー基準以上の断熱材、高断熱LOW-Eガラス、そしてフレームは樹脂製または木製が今後の住宅ではスタンダードになるでしょう。

 

◆断熱性能の低い住宅におこる健康の問題

日本では、あまり知られていませんが、世界の常識として、住宅の省エネ性能を高めていく時のセオリーがあります。

1)建物の躯体の品質(必要エネルギー)
2)給湯や冷暖房などの設備の高効率化(最終エネルギー)
3)再生可能エネルギーによる創エネルギー(一次エネルギー)

この3つの手法を上から順番を守りながら住宅の高性能化を図っていくことが、グローバルスタンタードな家づくりの常識です。住宅の高断熱化は将来のエネルギーコスト上昇への対抗手段としても有効です。2003年から2013年の10年間で、灯油1Lの価格は1.7倍に上昇しています。世界中でエネルギーの奪い合いが繰り広げられており、今後もエネルギーコストは上昇の一途をたどると考えられますので、家庭のエネルギー消費量の大半を占める、住宅の省エネルギー性能の向上は必要不可欠なものであるといえます。

 

◆「住宅の省エネ化」は内需を拡大する

次に少し広めの視点から。日本のエネルギー自給率はわずか4%程度しかなく、大半は中東などのエネルギー資源国からの輸入に頼っており、私たちの光熱費の大半は海外に流出しているともいえます。 自分たちが頑張って稼いだお金が、海外に吸い上げられていくのは我慢がなりませんね。ヨーロッパの国々が省エネリフォームを推進している最大の理由は、せっかく稼いだお金をエネルギーコストとして海外に流出させるのではなく、住宅への投資に振り替えることで、非常に大きな内需拡大効果が発揮できるからです。 また、省エネリフォームに投資した住人は、光熱費削減によって高い投資効果を得ます。ただ銀行に眠らせているよりも。おまけに健康で快適な生活も確保しながらです。 エネルギー自給率の低い我が国にとっては、「住宅の省エネ化」とは、低金利で眠らせている個人預金を地域経済活性化に活用する最高に優れた内需拡大システムなのです。
どうせ払うのなら、海外に吸い上げられるよりも、内需拡大に使う方が景気も良くなります。金は天下の回り物、景気拡大の観点からも、できる限り国内で循環するほうへの投資を優先させる必要があります。

この記事を書いた人

今泉 太爾
日本エネルギーパス協会代表理事。不動産仲介業を行う中で、築年数で価値が決まってしまう日本の建物評価制度に疑問を持ち、世界基準のサスティナブル建築・省エネ住宅をつくるために、2011年から「低燃費住宅」を全国展開。国土交通省不動産市場流通活性化フォーラム委員、住宅のエネルギー性能の表示のあり方に関する研究会委員を歴任。現在長野県環境審議会地球温暖化対策専門委員を務める。

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