短命な日本の住宅、その原因は?

2015年4月6日

◆エネルギーパス説明の前に知ってほしい「日本の住宅のココがオカシイ」

日本で戦後に建てられた木造住宅の寿命は約30年、国土交通省の統計データでは26年とされています。色々な統計データがありますが、おおむね30年で建て替えられているのが一般的。では世界基準で見るとどうでしょうか?アメリカ60年、ドイツ80年、イギリス100年、日本の2〜3倍は当たり前。ちなみにドイツは80年ですが、統計上ですと第2次世界大戦で大半が焼失してしまったからだそうで、実際には築数百年で現役の建物が数多く存在しています。


◆なぜ日本の家だけこんなにも寿命が短いのでしょうか?

デザインやコストダウン、集客手法などの目先の物事ばかりに目が行ってしまい、長持ちするような設計や長耐久建材の開発・使用に取り組む業者は少数派。世界的に見てもまれなほど高温多湿な環境を持つ日本で、長持ちする家を造ろうと考えたら、それなりの手間とコストがかかります。
しかし、長持ちさせる意味を顧客に説明することが難しいため、住宅の長耐久化に消極的です。反対に、家を安く作る事だけを考え、長持ちしない安い部材を使い、技術の未熟な職人に手間を削らせ、工期を詰めて造れば実現可能であり、安売りには説明も不要。残念なことに最近では初期コストは安いが短命な家造りが多く見受けられます。

日本では少子高齢化が進みいよいよ人口減少期に入り、住宅購入者が減少して需要が縮小しています。そんな中で短命なローコスト住宅が量産されると、需要と供給のバランスが崩れ、市場原理により地域全体で住宅価格が下がり続けます。これを古典経済学ではワルラス的調整と呼びます。住宅の長耐久性や省エネ性能などを犠牲にしたコストダウンと、行き過ぎた新築至上主義は、ほんの一握りの建設業者の利潤や住宅購入者の初期コスト低下のために、社会全体の住宅所有者の資産価値を犠牲にするという不合理な活動ともいえます。しかも当の本人も燃費やメンテ費用などのランニングコストで結局経済性も無いという落ちまでついているため、まさに「安物買いの銭失い」の代表といえます。

そのためにも、エネルギーというランニングコストを建てる前から明らかにできるエネルギーパスという制度を活用して、まずは良い新築住宅を供給していく。その次に今あるストックを良いものに変えていく。そのために良し悪しを計る共通の物差しがどうしても必要となるのです。

◆日本における住宅ストックへの対策

既存住宅の長寿命化及び性能向上には、耐震、省エネなどの建物の品質向上のためのリフォームが不可欠です。ところが日本においては、建物検査の仕組みが未整備の為、耐震性や維持管理を築年数で安易に評価しています。例えば木造住宅では30年で寿命と考えて、不動産価値評価を築年数で区切ってしまう考えが一般的。住まい手としては寿命の短い既存住宅への投資を躊躇してしまいます。そのため、耐震や断熱などの住宅品質向上のためのリフォームが思うように進んでいません。

住宅の寿命があと何年もつのかということを心配するのではなく、あと○○年間もたせるにはどこを直せばよいのか、というスタンスでリフォームを考える必要があります。

また、環境保護の観点から見ると、最低限度必要な「家の寿命」というものが見えてきます。一例を挙げると、日本の森林では木が柱などの家の構造材となるまで成長するのに、最低60年間以上はかかります。60年以上の年月をかけてようやく育った木材で建てた家を、たったの30年で壊して捨ててしまうというのは、資源の無駄遣いにほかなりません。木材を再生可能な資源として最大限活用するため、また、持続可能性の観点からも、木造住宅の寿命は最低でも60年以上として大切に使っていくことが社会的に求められています。

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限りある資源を大切に使い、出来るかぎり既存住宅を活用してリフォームしていく。どうしても新築する必要がある場合には、これからの社会に必要となる、インフラとして価値のある住宅、つまり高耐震、低燃費、高耐久な住宅(できればデザインも良く)だけを新築し、社会インフラとして次の世代へと継いでいく。「持続可能性」こそが、これからの家づくりの基本テーマではないでしょうか。